「メリトクラシー(méritocratie)」は、フランス語で「実力主義」または「能力主義」を意味する言葉です。
この概念は、個人の地位や成功が、生まれや社会的背景ではなく、能力(mérite)、努力、才能に基づいて決定される社会システムを指します。
「méritocratie」の意味と使い方
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méritocratie
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1. méritocratieの意味
- 綴り:méritocratie (「mérite」+「-cratie」)
- 発音:メリトクラシー([me.ʁi.tɔ.kʁa.si])
- 英語:meritocracy
- 日本語:実力主義、能力主義
「méritocratie」は「mérite(功績、実力)」と「-cratie(支配、制度)」の合成語で、「能力に基づく支配」を意味します。
2. méritocratieの語源と歴史
- 1958年:イギリスの社会学者マイケル・ヤング(Michael Young)が、風刺小説『The Rise of the Meritocracy』(メリトクラシーの台頭)でこの言葉を造語。
- 元々は批判的な意味で使われ、能力主義が新たな階級社会を生むと警告。
- フランスでの普及:1960年代以降、教育改革(例:1968年の「ファウル改革」)とともに広まり、特にグランゼコール(Grandes Écoles)の選抜システムと結びついた。
3. フランスにおける「méritocratie」の現実
フランスは「共和主義(républicanisme)」の理念のもと、「機会均等(égalité des chances)」を掲げていますが、実際には以下の問題があります:
✅ 理想
- バカロレア(baccalauréat):全国統一試験で大学進学資格を決める。
- グランゼコール:厳格な入試でエリートを選抜(例:エコール・ポリテクニーク、エコール・ノルマル・シュペリウール)。
❌ 現実の課題
- 社会階級の再生産:パリの名門校出身者や富裕層の子弟が有利。
- 例:グランゼコールの学生の70%以上が上位20%の家庭出身(INSEE調査)。
- 教育格差:貧困地域の学校は資源不足で、生徒の進学率が低い。
- 「世襲メリトクラシー」:エリートが子供に優位性を引き継ぐ(例:親のコネでインターンシップを確保)。
4. 「méritocratie」に対する批判
① 本当の「mérite」とは何か?
- 試験成績だけが能力か?
- 芸術、スポーツ、社会性など、多様な才能は評価されにくい。
- 努力は誰にでも平等に可能か?
- 貧困層はアルバイトや家庭の事情で勉強時間が限られる。
② 社会的不平等を助長する
- ピエール・ブルデュー(Pierre Bourdieu):
- 「文化資本(capital culturel)」がメリトクラシーの幻想を支える。
- 例:親が高学歴だと、子供は自然と「エリートになるためのコード」を学ぶ。
- トマ・ピケティ(Thomas Piketty):
- 「メリトクラシーは実際には富の世襲を隠すためのイデオロギー」と批判。
③ 競争の過熱とストレス
- 「成功者」と「敗者」の二極化:失敗した人々は自己責任を負わされ、社会的孤立につながる。
- 精神健康の悪化:過度な競争がうつ病やバーンアウトを引き起こす。
5. 「méritocratie」の代わりに何があるか?
近年、フランスでは以下の代替案が議論されています:
- 「égalité réelle」(実質的平等)
- 単なる機会均等ではなく、結果の平等を目指す。
- 例:貧困層向けの奨学金拡充、地域格差の是正。
- 「tirage au sort」(抽選制)
- 一部の公職や教育機関で、抽選を導入して運の要素を加える。
- 例:ベルギーの一部大学で実験的に導入。
- 「démocratie participative」(参加型民主主義)
- 市民の意見を政策に反映させ、エリート主導を避ける。
まとめ
| 理想 |
現実 |
| 能力と努力が評価される |
富裕層が有利なシステム |
| 公平な競争 |
文化資本の世襲 |
| 社会の活性化 |
階級の固定化 |
結論:フランスの「méritocratie」は、理念としては美しいが、現実には不平等を温存するシステムです。今後は、真の機会均等を実現するための改革が求められています。
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